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腰の痛みはいつ治る? -第2話 痛みを前向きにとらえる-
前回の第1話では、腰痛に関する最近の考え方や心と体の繋がりが痛みに大きく影響すること(バイオサイコソーシャルモデル)についても
お話しいたしました。危険なサインを見逃さない「フラッグシステム」についても、理解を深めることができたかと思います。
第2話となる今回は、さらに実践的な内容へと踏み込んでいきます。
実際に当院のような整形外科を受診された際に行われる検査の仕組みや、見えない痛みをあぶり出すMRI技術、そしてお薬や運動療法を用いた具体的な治療の進め方について詳しく解説します。さらに、綾瀬駅周辺での生活のなかで、皆様ご自身がご自宅や職場で取り組める腰痛セルフケアについてもご紹介いたします。
⏳【腰痛の時期における分類と回復過程】 痛みの期間に応じた対処を
腰痛は、発症してからの期間によって「急性」「亜急性」「慢性」の3つに分類され、それぞれ回復の過程や適切なアプローチが異なります。
※ 回復の過程は症状により個人差があります。
📅 急性腰痛(発症から4週間未満)
いわゆる「ぎっくり腰」などがこれに含まれます。
非常に強い痛みを感じることが多いですが、実は急性腰痛の自然経過は概ね良好です。多くの場合、適切な対処を行えば数週間で自然に軽快へと向かいます。この時期に重要なのは、「痛いからといって過度に安静にしすぎないこと」とされています。最新のガイドラインでも、急性腰痛に対してはベッドでじっと寝ている(安静)よりも、痛みの許す範囲で日常生活の活動性を維持した方が、痛みの軽減や身体機能の回復が早く、仕事への復帰も早いことが示されています。
ただし、あくまでレッドフラッグの鑑別を行う必要があるため、医療機関の受診を行う必要はあります。
📅 亜急性腰痛(発症から4週間以上、3ヶ月未満)
急性期の激しい痛みは落ち着いたものの、まだスッキリと痛みが引ききらない時期です。
この時期に適切なリハビリや生活習慣の改善を行わないと、痛みが慢性化してしまうリスクが高まります。
📅 慢性腰痛(発症から3ヶ月以上継続)
痛みが3ヶ月以上続いている状態です。
慢性腰痛の自然経過は、急性腰痛に比べて不良であることがわかっています。長引く痛みにより、筋力が低下したり、脳が痛みに対して過敏になったり、精神的なストレス(第1話でご紹介したイエローフラッグ)が蓄積したりと、様々な要因が複雑に絡み合っています。そのため、単なる湿布や痛み止めだけでなく、運動療法や心理的アプローチを組み合わせた治療が必要になってきます。
🩺【腰痛に対する検査方法】
痛みの正体を見つけ出すために腰痛の治療において最も重要なのは、的確な診断です。
医療機関では、医師による診察と、様々な機器を用いた検査を組み合わせて、痛みの原因を特定していきます。
1.画像検査の役割と注目されている技術
整形外科を受診して最初に行われることが多いのがX線(レントゲン)検査です。
レントゲンは骨の並びや変形、そして何より骨折などの重篤な状態(レッドフラッグ)を見逃さないための除外診断として非常に有用です。
しかし、レントゲンだけでは椎間板や筋肉、神経といった軟らかい組織の状態はわかりません。そこで威力を発揮するのがMRI検査です。神経症状(足のしびれなど)がある場合や、レッドフラッグが疑われる場合にはMRIによる精査が推奨されます。
さらに近年、非特異的腰痛(レントゲンでは異常なしと言われやすい腰痛)の痛みの発生源を可視化する技術として「STIR−MRI」が注目されています。
STIRとは、炎症を起こして水分が多くなっている部分を白く強調して映し出す特別なMRIの撮影方法です。
これにより、椎間板周囲の炎症所見など、レントゲン画像では移りにくい所見を得ることができます。
レントゲン上、特に異常なしと言われた腰痛の裏側には、こうした微細な炎症が隠れていることもあり、STIR−MRIを活用することで、より正確な診断と的確な治療へ繋げられるケースもあります。ただし、高額な検査になるため、検査としては、レッドフラグが疑われない限りファーストチョイスにはならないことがほとんどです。
当院でもMRI検査が必要な場合は、検査を受けられる医療機関へご紹介いたします。
2.詳細な理学検査
画像検査で器質的な異常(骨折や明らかなヘルニアなど)が認められなかった場合、次に重要になるのが、身体の動きや筋肉の状態を直接確認する理学評価です。
・アライメント(位置関係)評価:姿勢のゆがみを確認します。腰が反りすぎている(前弯姿勢)、背中が丸まっている、骨盤が後傾しているなど、日常生活の不良姿勢が腰に過剰なストレスを与えていないかを観察します。
・関節可動域・筋群の伸張検査:腰だけでなく、隣接する股関節や肩甲骨の硬さが腰痛を引き起こすことは多々あります。太ももの前の筋肉(大腿直筋)、裏の筋肉(ハムストリングス)、足の付け根の筋肉(腸腰筋)が硬く縮こまっていないか(短縮していないか)、上半身(肩甲骨や胸椎)の動きは適切かなどを検査します。
・体幹筋機能検査:腰をコルセットのように支える深層の筋肉(腹横筋などのローカル筋)が正しく働いているかを確認します。
💊【腰痛の原因別の治療方法】 ガイドラインに基づくアプローチ
検査によって原因や状態が把握できたら、それに応じた治療を開始します。医療機関では症状に応じて、様々な選択肢が提案されます。
1.薬物療法、注射療法
痛み止めのお薬は、痛みを和らげ、身体を動かしやすくするために非常に有用であり、ガイドラインでも強く推奨されています。
・急性期には、即効性のある非ステロイド性抗炎症薬(いわゆるロキソプロフェンなど)がよく用いられます。
・慢性期や、神経の痛みが絡んでいる場合には、痛みを抑える神経の働きを助けるお薬(SNRI)や、神経障害性疼痛に対するお薬、弱オピオイドなどが患者さんの状態に合わせて処方されます。
また、痛みが非常に強い場合には、痛みの出どころに直接アプローチする注射療法(硬膜外ブロック、神経根ブロックなど)を行うことで、早期の日常生活への復帰をサポートします。
2.装具療法(コルセットなど)
コルセットは、急性期に痛みが強くて動けない時に、腰を安定させる目的で使用する分には有用です。しかし、ガイドラインにおいては「コルセットを着けていれば腰痛を完全に予防できる」という直接的な予防効果は証明されておらず、長期間の使用は自身の筋力低下を招く恐れもあるため、痛みの軽減に合わせて徐々に外していくことが望ましいとされています。
3.物理療法
牽引療法、超音波療法、温熱治療、低周波治療などの物理療法は、急性期の一時的な痛みの緩和や血流改善には一定の効果が期待できます。しかし、これら単独で腰痛を根本的に治すという確固たるエビデンス(科学的根拠)は不足しており、症状に応じた運動療法などとの組み合わせが必要です。
4.運動療法
慢性腰痛の治療において、最も効果が実証されており、ガイドラインでも「行うことを強く推奨する」とされているのが運動療法です。
痛みがあると身体を動かすのが怖くなりますが、安静にしすぎると筋肉が衰え、関節が硬くなり、さらに痛みが悪化するという悪循環に陥ります。理学療法士や柔道整復師などの専門スタッフの指導のもと、正しいフォームでストレッチや筋力強化を行うことは、慢性腰痛を根本から改善する最大の近道です。
🧘【腰痛のセルフケア】 ご自宅・職場でできる実践アクション
最後に、足立区・葛飾区エリアで日々お忙しくされている皆様はもちろんのこと、ご自身で取り組めるセルフケアを一部ご紹介します。
※強い痛みがある際には実施を控え、まず医療機関を受診し、運動開始の支持を得てから行ってください。
1.柔軟性を取り戻すストレッチング
腰に負担をかける原因となる股関節周りの筋肉の柔軟性を改善します。
○ 太ももの裏(ハムストリングス)のストレッチ:
仰向けに寝て、片方の足の裏にタオルを引っ掛け、膝を伸ばしたまま足をゆっくり天井方向に持ち上げます。太ももの裏が心地よく伸びる位置で30秒キープします。
※軽く挙げるだけで強い痛みを感じる場合は、実施を控え、早期に医療機関を受診することをお勧めします。
・足の付け根(腸腰筋)のストレッチ:
💡 その1
仰向けになり、片方の膝を曲げ、両手で膝を抱えて胸に近づけます。
反対の膝裏が床から離れてくる場合は、その分を床に押し付けることで、延ばしている側の股関節の全面である、腸腰筋のストレッチを行い、30秒ほど伸ばします。
💡 その2
その1で特に痛みもなく、延ばしている側の股関節の全面が延ばされる感じがしない場合は、片膝立ちになり、背筋を伸ばしたまま体重を前方に移動させます。後ろに引いた足の付け根の前側が伸びるのを感じながら30秒キープします。
2.正しい姿勢を作るエクササイズ
○ キャットアンドドッグ:
四つん這いになり、息を吐きながら背中を丸め(おへそを覗き込む)、息を吸いながら背中を反らします(胸を張る)。これをゆっくり5~10回繰り返し、背骨全体の柔軟性を高めます。
※ 丸めるときはむしろ肩甲骨を開くように床を押し、腰をそらすときは肩甲骨の内側を引き寄せるようにすると腰に負担がかかりにくいです。
3.天然のコルセットを作る(スタビライゼーション)
○ ドローイン(腹部引き込み運動):
仰向けで膝を立てます。息をゆっくり吐きながら、おへそを背中に近づけるようにお腹を薄く凹ませます。そのまま浅い呼吸を続けながら5~10秒キープします。これは腰を安定させる深層筋(腹横筋)を鍛える基本の運動です。
※ 腰をそらせないように意識するのがポイントです。
4.心のセルフケア
最も大切なセルフケアは、「痛みを過剰に恐れないこと」です。第1話でお伝えしたように、「動いたら悪化する」という恐怖回避思考は、腰痛を長引かせる可能性があります。医師から運動の許可が出ている場合は、「少し痛いけれど、動かした方が良くなるんだ」と前向きに捉え、過度な安静を避けて、普段通りの生活を心がけましょう。
※ 強い痛みをこらえるという意味ではなく、通常の生活を送れる範囲での疼痛であることが重要であり、痛みの悪化がある際には医療機関を迷わず受診しましょう。
📝【第2話まとめ】
全2回にわたってお届けした「腰の痛みとの向き合い方」、いかがでしたでしょうか。
第2話では、急性・慢性の時期に応じた考え方、STIR−MRIなどの画像診断や理学評価の重要性、そしてガイドラインで強く推奨されている運動療法の意義と具体的なセルフケアについてお伝えいたしました。
足立区、葛飾区、そして綾瀬駅周辺で腰痛にお悩みの方はもちろんのこと、決して一人で抱え込まず、いつでも整形外科へご相談ください。
あやせ駅前整形外科・内科では、お一人おひとりの生活に寄り添ったリハビリテーションを通じて、皆様が心も体も笑顔で暮らせる日常を取り戻すためのサポートを心がけております。
2回にわたり、長文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
もし腰に違和感を覚えることがございましたら、いつでもお気軽に当院へご相談ください。
🏥 あやせ駅前整形外科・内科(綾瀬駅 西口徒歩1分)
☎ 03-3601-4171